「・・・あれぇ?三蔵どこ行ったんだよー!!」

悟浄の家に向かう途中、ちょっとうまそうな肉まんにみとれてたら三蔵が消えた。
慌てて町中を走り回ったんだけど見当たらなくて、それでも一生懸命走ってたら・・・なんか赤いのが目に入ったから立ち止まった。

「・・・な、頼むよ。」

「もぉ〜また誤魔化すつもりね?」

「んな事ねェって・・・」

あっ、悟浄じゃん。そっか・・・この先に悟浄の家あるんだもんな。
今から悟浄んとこ行くはずだったから、連れてって貰ってそこで三蔵待ってればいいや。
そしたら八戒のメシも食えるかもしんないし、にも会えるかもしんない。

そう思って悟浄に声をかけようとしたら ―――
 悟浄がねぇちゃん食ってた。



「・・・コレでカンベン。」

「・・・しょうがないわね。来月までよ?」

「わーってるって、サンキュウな♪」

それに見とれてたって言うか、びびってボーっと立ってたら悟浄が俺に気付いて近づいてきた。

「何だよ、チビ猿。迷子か?」

「・・・なぁ悟浄、今何してたの?」

「あぁ?」

店に入っていくねぇちゃんの頬は確かに赤くてリンゴみたいでうまそうだったけど・・・腹、ふくれなそうだよな。

「見てたのか・・・」

舌打ちをして頭を抱えた悟浄の腕を引っ張って、もう一度同じ質問をする。

「なぁ、何してたんだよ!」

「何でもいいだろ、オコサマには関係ねェコ・ト・だ・ヨ。」

「お子様じゃねぇ!」

それから暫く悟浄と言い合いをしてたら、別のねぇちゃんが悟浄の側にやってきて俺を押し退けて二人で話し始めたけど・・・悟浄まだ俺の質問に答えてねぇ!

「なぁ悟浄!!」

二人の周りでギャーギャー騒いでたら突然悟浄に耳を掴まれて怒鳴られた。

「ギャーギャー騒ぐなってんだ!こっのちびサル!

「サルって言うな!!」

「・・・悟浄?」

「あ、あぁワリィ。あとで店行くからちっと待っててくれ。」



・・・あ、またねぇちゃん食った。
さっきのねぇちゃんより頬白くてまずそうだぞ?
でも悟浄が食ったらねぇちゃんの頬、赤くなって少し美味そうになったかも。



ぼーっと二人の姿を見ていたら悟浄が頭をかきながらしゃがみ込んで面倒臭そうに、さっきからの行動の意味を教えてくれた。

「綺麗なねェちゃんへの挨拶だよ、ア・イ・サ・ツ。」

「・・・アイサツ。」

「そうそう。オハヨウ、コンチワ、コンバンワと同じ。綺麗なねェちゃんがいたら何もしないのは逆に礼儀に反するんだよ。」

「・・・ふ〜ん。」

そっか・・・俺、三蔵からあんまりそーいうの聞いた事なかったもんな。
って言うか三蔵がそう言う挨拶してるの見た事ないや。

八戒も・・・無い、よな。
八戒は買い物の時良くオバチャンと話してるけど、悟浄みたいにしてるの見た事、ないよな。
あ、でも良くオバチャンと握手してるの見た事あるぞ!!
それも同じ意味なのかな・・・?

そんな風に考えてる間に悟浄がいなくなって、三蔵が俺の頭をハリセンで叩くまで・・・俺は今悟浄に聞いた事を忘れないよう一生懸命頭の中で繰り返しつぶやき続けた。






























今日は三蔵が午後から八戒の家に行くって言うから朝からずーっと大人しくしてた。
三蔵に言われた通りちゃんと一人で布団をあげて、部屋の掃除もして、ゴミ箱のゴミも全部捨てに行った。
大人しく言う事を聞いてれば三蔵は八戒達の所に俺も連れてってくれる。

それに俺、知ってんだ。
三蔵が自分から八戒達のトコ行くって言う時には必ずがいるって事!

あれ?でもそう言えばどうして三蔵はがいる事知ってんだろう?
・・・俺に内緒でと連絡取ったりしてるのかな。










「いらっしゃい、悟空。」

「あーっ!!!」

やっぱりいた!
八戒と一緒に家の前で待っててくれたに駆け寄ると、いつもみたいにぎゅって抱きしめてくれた。
今までこんな風にされた事なかったから、最初はすっげーびっくりしたけど今は気持ちいいって思える♪
それにがこうするのは・・・俺だけってのがちょっと嬉しい。
だってが三蔵や悟浄、八戒にこんな風にしてるの見た事ねぇもん!って事は俺だけ特別って事じゃん。
そう思うようになったのは・・・最近なんだけど。



「三蔵、今日は夕飯食べて行きますか?」

「あぁ。」

「三蔵お仕事終わったの?」

「・・・あぁ。」



あっれー・・・三蔵朝からスッゲー顔して山積みの紙切れにハンコ押してたじゃん。
なのににはそう言う事全然言わないんだ。
悟浄達には毎日忙しい忙しいって言ってるのに・・・変なの。

首を傾げながらふと自分を抱きしめているの横顔に目がいった。
いつも正面から見てばっかだったけど、って・・・すっげー綺麗。
家の中じゃなくて、外で一緒に遊んでる時も思ったけど・・・でっかい目とか長い髪とか、三蔵とはまた別の『綺麗』だなって思う。





皆は良くの事『かわいい』って言う。
も俺の事ときどき『かわいい』って言う。
俺だって男なんだからかわいいって言われるのはちょっと・・・って思う時もあるけど、それよりもが俺の事かわいいって言ってくれる時の笑顔はすっげー好きだから、言わない。

俺が一番の事綺麗だなって思ったのは、皆と話してる時の顔。
が話してるんじゃなくて、三蔵や八戒や悟浄が話してるのを聞いてる時のの顔がすっげー綺麗。
理由はわかんねぇけど、ピカピカ光る石よりも、洗ったばっかのコップよりも透明で光ってる感じ。
見てるとすっげー嬉しくて、触りたいけど触ると曇っちゃいそうで・・・手が伸ばせない。



「じゃぁ今日はゆっくり出来るんだね♪」

「あぁ。」

「それじゃぁお茶の用意をしましょうか。」





・・・あ゛やばい!

俺、の事綺麗だって思ってからちゃんと挨拶してねぇじゃん!
いっつも俺が何か言う前にがぎゅってしちゃうから、挨拶しそこねてたんだ。
うっわー・・・俺ってマジ馬鹿じゃん!悟浄にバカ猿って言われてもしょうがねぇよ!

悟浄に言われた事を思い出しながら、三蔵達と家の中に入ろうとしたを慌てて引き止める。

!ちょっと待って!」

「ん?どうしたの悟空。」

「あのさ、あのさ・・・」

「うん?」

うわっ・・・なんかすっげードキドキしてきた。
だってさ、がじっと俺の顔見て待ってんだもん!
これってやっぱり挨拶待ってんだよな?!

「悟空?」

俺よりちっこいはちょっと上目遣いになってて・・・そんなもやっぱ綺麗だなって思った。だから・・・今までにないくらい勇気をふり絞って、悟浄がしてたみたいにの頬に ――― そっと口を当てた。

「・・・こ、
こんちは。

うっわぁ〜〜の頬ってどんな食いもんよりも柔らかくて、すっげー甘い!!
そっか、悟浄が食ってたねぇちゃんも同じ味すんだ・・・でもが一番綺麗だからきっと一番美味いんだろうな♪
でっでもこれって、すっげー照れる!挨拶うまく出来たのかな!?
そう思って顔を上げたら・・・俺が口を押し当てた方の頬を押さえたままが顔を真っ赤にして固まってた。



あれれ?・・・俺、挨拶失敗した?



「あの・・・」

「何やってやがるこの馬鹿猿がっっっ!」

俺がに声をかけるよりも早く、三蔵のハリセンが頭に振り下ろされた。

「いってぇ〜っ・・・」

な、何だよ!俺が一生懸命初めての挨拶したのに、どうして叩かれなきゃいけないんだよ!
しかも今まで叩かれた中でいっちばん痛かったぞ!今の!!
痛さのあまり目から涙が出そうなのを堪えて顔を上げたら・・・この間八戒が見せてくれた本の鬼よりこえー顔した三蔵がを背中にして立ってた。

「さ、さんぞ?」

「てめぇ今何した。」

「なにって?」

「コイツに何したって言ってんだよ!」

「いてっ!」

三蔵何でこんなにハリセンで思いっきり叩くんだよっ!
俺挨拶出来てなかったのか?間違えたのか!?

「大丈夫ですか、?」

「あ・・・うん、驚いただけだから・・・」

驚いた?何でが驚くんだ?だって挨拶なんだろ???

「とっとと質問に答えろ!」

「三蔵、そんな頭ごなしに怒鳴りつけなくても・・・」

八戒なら俺の挨拶どうだったか教えてくれるかな?
そう八戒に聞こうと思って顔を上げた瞬間・・・血の気が引いた。



さ・・・三蔵が怒るより、こえぇ・・・。
顔、笑ってるし・・・いつもと同じ顔してんのに、何で逃げたくなるくらい怖ぇんだ?!



「・・・悟空?今、に何をしたんですか?」

「っっ!」



いつもの八戒じゃねぇ!
声がっ声がいつもと全然違って低いし冷たい!!



三蔵の事、怖いって思うのは今までも時々あったけど八戒を怖いって思ったのは初めてだ。

「ごっごめ・・・俺・・・」

に、
何をしたんですか?



・・・八戒の目、笑ってねぇ。



血の気が引いたみたいに顔が冷たくなって俺は怒った顔した三蔵の後ろに隠れながら何とか声を出した。ちょっと声、掠れたけど・・・。

「あっ挨拶した!!」

「「挨拶?」」





これ以上三蔵にハリセンで叩かれるのも、八戒に睨まれるのも嫌だったから・・・俺は悟浄に教えて貰った正しい挨拶の仕方を実践したと二人に言った。

「そうだったんですか・・・」

「ロクな事言わねぇな・・・」

「俺、挨拶出来てないのか?」

恐る恐る二人に尋ねてみたら、今度はいつもと同じ優しい顔した八戒が俺の頭を撫でながら優しい声で教えてくれた。

「悟空はキチンと挨拶出来ていますよ。」

「でも・・・」

「悟浄が教えた事は・・・別の意味です。悟空がもっと大人になったら自然とその意味が分かりますよ。」

「・・・大人っていつ?」

「それは・・・」
「それは?」

身を乗り出して続きを聞こうとしたら・・・へたくそな鼻歌に邪魔された。

「・・・お、何だお前ら来てたのか。」

「あー!!悟浄!悟浄のせいで・・・」

三蔵と八戒に怒られたんだぞって言おうとしたら、俺の前に三蔵と八戒が立って最後まで言えなかった。

「・・・悟空、と一緒におやつを食べて待ってて貰えますか?」

「え?」

「悟空、中に入れ。」

「え??」

意味が分からなくて聞き直そうとしたら三蔵が悟浄の方を向いたまんま俺の頭を叩いて、のいる家の中を指差した。

「・・・とっとと入れ。」

「う、うん・・・」

中に入る前に八戒におやつがどこにあるのか聞こうと思って振り向いて・・・声かけるの止めた。
さっきと同じ、すっげー冷たい空気感じたから、慌てて家の中に駆け込んで扉閉めた。
その後、に謝って一緒におやつを食べてた時、皆が戻ってきたんだけど・・・帰ってきたはずの悟浄が、いなかった。










大人になったらの頬に唇をつけた事の意味が分かるって言われたけど
別の日になんか体中傷だらけの悟浄があれは
「キス」だって教えてくれた。
自分の事を好きな人にするもんだって

あれ?それなら俺、誰にも怒られる必要なかったんじゃないのかな?
だって俺、の事大好きだから・・・





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悟空ドリームとなってますが、どう見ても・・・逆ハー、しかも一応・・・ギャグのつもり(笑)
ギャグじゃなきゃUP出来ないでしょう、これは(苦笑)
だってドリームのクセしてヒロイン全然出て来ない!!
本当はもう少し出てくる予定だったんだけど、悟空が一生懸命喋ってるおかげで出てこなくなっちゃった(苦笑)

さて、気を取り直して・・・トンビに油揚げじゃないけれど、ヒロインへキスするいっちばん最初の権利は悟空獲得(爆笑)
ま、本人は悟浄に教えられた嘘を信じて「綺麗なおねいさんへするご挨拶」と思ってますが(笑)
参謀である香原さんに
「悟空にトンビに油揚げされたら大人三人組はどんな反応するかなぁ」
と言う素朴な疑問から発展し、
「そう言う事の発端って悟浄だよね?」
「うんうん」
・・・そしてラストの哀れな悟浄が誕生したのでありました。
でも私、そんな悟浄も大好きですよ!←フォロー?